sisosuseのブログ

日々感じたことを思い思いに書いていくブログです。

ジョジョリオン感想─透龍の呪いについて─

 

思い返してみれば、岩人間の目的とはなんだったのでしょう。アーバンゲリラや羽伴毅がそれっぽいことを匂わせていましたが、漠然としていてグループをまとめる旗印としては弱いように感じます。そもそも岩人間はあまり群れないとされていて、仲間意識が低い個体が多いようです。実際、ドロミテは神社で静かに暮らしていました。とするとロカカカを欲していることは同じでも、岩人間たちの最終的な目標はそれぞれ違ったのかもしれません。例えばロカカカで世界を牛耳るといったこと以外にも、大金を稼ぐ、自分が不死となるなどなど。

 

では透流君の目的はなんだったのでしょうか。透龍君は新ロカカカを追って定助たちと対峙します。また27巻の過去編ではこっそりと東方家の敷地でロカカカを栽培していたようです。やはりロカカカを使用して何かをなそうとしていたのでしょう。しかしそれと同時に、恋愛にもご執心なようです。康穂に復縁を求めたり、定助を恋敵のように扱ったりしていましたね。このように作中ではリーダーとしての面よりも、恋する(岩)男としての面が強調されていたように思います。

 

思えば、岩人間は群れない習性をしていますが、恋愛は人間並にするようです。愛唱しかり、ドロミテしかり。ただあくまでも利己的な岩人間の考え方に基づいたものです。相手を想うのだけれど、それよりも強く自身の利益を考えてしまう。それが岩人間と人間との違いであり、人間と岩人間との恋愛が決して成就しない理由なのではないのでしょうか。それでも人の温もりを求めずにはいられない、岩人間はそういう悲しいさだめを背負った生物なのかもしれません。

 

こうして見ていくと、透龍君の目的は心に空いた穴を埋めることだったように思えてきます。いや、大抵の目的はそれだろうと思われるかもしれません。ここで私が言いたいのは、透龍の目的は実は具体的ではなかった、ということです。先ほど岩人間たちの目的が漠然としていると言いましたが、まさにその通りだったのです。透龍君はじめ岩人間たちは何か漠然と欠けているものを感じていて、それを満たすことこそが目的であり、そのためにロカカカを使ったビジネスを選択したと考えられるのです。

 

しかし、なかなか心は満たされない。それもそのはず、心の穴は金では埋められないからです。透龍君がそのことに気づいたのは最後の最後でした。岩には想い出が存在しないという透龍君でしたが、最期に蜂の幻覚を見たことで初めて、透龍君は自らの求めていたものがわかりました。

 

蜂の意味するものは岩人間の生態から解釈できます。岩人間はごく小さな体で生まれ、蜂が攻撃してくる時を待ちます。そして蜂が近づくとそれにしがみつき、蜂の巣に住み着くと、蜂が運んでくる養分で成長するという生態をしています。

 

我々人間は母親からお乳をもらって成長します。ですがそれだけではありませんね。我々は栄養とともに愛情を受けて育ち、それらをひっくるめて子供は自然と親に愛と感謝の念を抱くわけです。対して岩人間が得るのは無機質な養分だけ。そこに愛情はありません。

 

ただ、岩人間も本能のまま動く昆虫とも違います。彼らは、少なくとも透龍君は、たとえ僅かであっても蜂に、育ててくれたものに感謝の念を抱いているのです。透龍君が見た蜂の幻はそうした感謝であり、想い出であり、つながりの記憶だったのです。それは決して利己的な行動では手に入れることができないし、金で買えるものでもない。利己的に生きてしまうさだめを背負った岩人間には到達し難い境地、透龍君は死に際にそれを悟ります。

 

さだめによって心の一部を奪われた岩人間、悲しい運命の下であってもそれを取り戻そうと懸命に逆らい続ける彼らにとって、ロカカカは無限の可能性を秘めているように写ったに違いありません。ただそれは間違っていた、、最後にそれに気づいた透龍君はどう感じたのではないでしょうか、、、ただ一つ言えるのは透龍君は最後の最後でそれに気づけたという点で他の岩人間と一線を画しているということです。

 

「全ての呪いが解けるとき」、透龍君の死に際もまた彼の呪いが解けた瞬間だったのではないでしょうか。そこにはホリーの示す愛でもって「呪い」が解けた定助と、蜂の幻が象徴する愛の不在でもって「呪い」が解けた透龍という対比も見てとれます。

 

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豊かさのために欲しいものは「欲しい」…それを狙っている。「食べ物」とか…「権力」とか…「名誉」とか……「愛」とか…

38話、岩人間の生態について話したつるぎのセリフです。最後の「愛」の部分が強調されています。このセリフを通して荒木先生は、今回の敵は今までとは一味違うということを暗示していたのかもしれません。

…(ジョジョリオンは登場人物による解説が露骨すぎると感じますが)

 

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